2007年に就農し、「そら野テラス」をオープンしたのは2016年。9年の間にどのような構想を練ってこられたのでしょうか。
藤田:
就農後、稲・大豆の生産をがっつり5年間担当し、その後「越後西川あぐりの里」という小さな直売所と加工所の運営を任されました。野菜やおにぎり、お餅、ジャムなどの販売を行いながら、いちご狩りも行っていました。けれども、当時の建物・設備ではお世辞にも心地が良いとは言えず、お客様は買い物やいちご狩りが終わるとすぐに帰ってしまうのが悩みでした。この場所に「せっかく来ていただいたお客様にもっと心地よく、ゆったりと過ごしてもらえる場所があれば」と考えたのが「そら野テラス構想」の始まりです。
当初、市役所に相談したところ「カフェは農地に建設できないため、現在の場所では不可能です」と言われました。転機は2014年の国家戦略特区指定ですね。新潟市が農業特区に指定され、農家レストランを農地に建設できる規制緩和が実現しました。
オープンまでの準備はどのように進めていったのでしょうか。
藤田:
毎週のようにデザイナー、建築家、プランナーとチームで集まり、方向性を話し合いました。「そら野テラス」という名前も建築家の方が考えてくれました。
反面、周囲からは「無謀だ」と言われました。田んぼの真ん中に高額な設備投資をしても、お客なんて来るわけがないと。ですが、私としては直感的に「絶対大丈夫!」という根拠のない確信がありました。なぜ?と言われても答えづらいのですが……(笑)。本当に直感なんですよね。
事業計画では3年後に客数8万人で売上1億円という目標だったそうですが、それを1年目で達成したそうですね。藤田さんの中で、0から1を生み出すために最も重要だったこととは。
藤田:
まず「明確な目標設定」です。「ここにそら野テラスをオープンさせる」という基本コンセプトがブレなかったからこそ、失敗があっても修正できました。目標に向かって情報のアンテナが立ち、全国はもちろん世界の店の運営方法やメニューの見せ方ばかり見ていました。良いところは全部参考にしましたね。
もう一つは「外部の目線の活用」です。農業に関わっていない人たちの視点を積極的に取り入れました。既存の常識にとらわれない発想を生む、行動と環境が大切だと感じます。
働く環境の改善にも心がけているとお聞きしました。
藤田:
「笑顔で安心して働ける会社を作る」という経営理念を掲げています。そら野テラスで働く約50名のスタッフのほぼ全員が女性のパートタイムですが、新しいスタッフが入るたびに「スタッフ同士、必ず仲良くしてくださいね」と伝えています。というのも、スタッフの雰囲気が店の雰囲気を決めるからです。一般のお客様はもちろん、農家さんや業者さんに至るまで、そら野テラスに関わる全ての人を「お客様」として扱い、農家さんや業者さんが来てくれたら必ず「ありがとうございます」とお礼の気持ちを伝えることを徹底しています。