「明和義人伝~モダンタイムズ~」第1回 : 山田彩乃さん

プロフィール

山田 彩乃さん

地球の子ども食堂と宿題Café 代表。NPO法人Lily&MarryS 代表。他に、株式会社Shitamichi HD常務取締役、リリマリプロダクション代表など数多くの肩書きを持つ。モデル・タレント業でも活躍し、2015年の「ミス・アース・ジャパン」では日本代表に選出。一方で中高教諭第一種免許状(理科)を保有、現在通信制の高校でも教鞭を執っている。BSNラジオ「マエカブナカシズカ」毎週金曜日にレギュラー出演中。

芸能の仕事で発信力をつけた上で、子どもに関する事業を始めたいと考えていた山田彩乃さん。
自由に集まって遊び、宿題ができる「地球の子ども食堂と宿題Café」をオープンさせた。
新しい形の居場所を提供する活動を通じて、今、そして今後、取り組みたい夢を伺いました。

子ども目線の楽しい交流の場をつくりたい

教員免許を持っているそうですが。

 

山田:
はい子供の頃から学校の先生になりたくて、群馬県の高校から新潟大学に進学し、中高の理科の教員免許を取得しました。大学生の頃に今の会社(リリマリ)に出会い、芸能活動を通じて地域活性化につながればと思って今の仕事を始めたのですが、決して教育の仕事を諦めたわけではなく、芸能の仕事で発信力をつけた上で、子どもに関する事業を始められたらいいなと思っていました。

 

「地球の子ども食堂と宿題Cafe」をオープンしたきっかけを教えてください。

 

山田:
子どもたちのために何かできることはないか、それが塾なのか学校なのかフリースクールなのか、ずっと考えていました。折しもコロナ禍で子どもたちの遊び場が無くなっていて、友達の家にも遊びに行けないし通学も制限されている。それなら子どもたちが自由に集まって遊んだり、宿題したりできる場所が必要なのではないかと思ったのです。しかもごはんも食べられたら、さらに楽しい。今の時代に合っているし、面白いなと思いました。

 

「子ども食堂」という形態を選んだのはなぜですか?

 

山田:
親御さんが共働きだったり、片親さんだったりする子たちは多くて、今は家族だんらんがなかなか実現しにくい時代です。私は、誰かと一緒にご飯を食べる楽しさや食事を通しての会話ってすごく大事だと思っていて、1人で食べるより友達と食べたほうがずっとおいしいし、楽しいはずです。ですから、食事を提供(持ち帰り)するだけじゃなくて、「居場所」を提供できるようにしたいと考えました。

食事、宿題だけでなくマナーを教える場にも

「地球の子ども食堂と宿題Cafe」とは具体的にどんなスペースですか?

 

山田:
一言で言うと「子どもが自由に使える場所」。一回家に帰って、習い事や塾の時間になるまでここで過ごしたり、ここにいるボランティアの大学生に勉強を教えてもらったり、ゲームやマンガや遊び道具もあるし、違う学校の子とも友達になれるし、「毎日来たい」っていう子が多いです。オープン時間は毎日夕方4時から夜8時まで。食事は中学3年生まで無料、高校生は300円。料理が並ぶテーブルから自分でプレートに取って、自由に食べてもらうシステムです。

 

子どもたちに守ってもらうルールはありますか?

 

山田:
食事に関しては、配膳から後片付けまですべて子どもたち自身で行います。まず、料理を乗せるプレートは、部屋から離れた厨房までわざわざ取りにいく決まりにしています。なぜなら、料理を作ってくれるスタッフに「こんにちは。お皿をもらいます」と挨拶をしてもらうため。食べ終わったらまた厨房へ行き、「ごちそうさまでした」を言って自分で食器を洗います。じつは「地球の子ども食堂と宿題Cafe」を運営するために飲食店を併設させていて、そのお店の店長さんが子どもたちのごはんを作ってくれているのです。「みんなが無料で食事できたり、場所を使えたりするのは当たり前じゃない。いろんな企業さんがお金を出してくれている場所なのだよ」ということを子どもたちに知ってもらって、自分のことは自分でする、感謝の言葉を伝えることなどを、習慣にしてほしいと思っています。

将来の夢は教育の場に発展させること

子どもの親御さんからはどんな反応がありましたか?

 

山田:
多くの方から「とても助かります」という声をいただいています。お仕事して家事もして、子どもの宿題まで見てあげるのは大変な労力。少しでもお父さんお母さんの心のゆとりが増えるのであれば、こちらも嬉しいですね。また、飲食店が併設されていることで、子どもはこちら側で遊んでいて、両親は向こう側で食事しているという光景も見られます。子どもだけでなく大人にとってもいい場所だなというのは、改めて感じています。

 

ネガティブなイメージを払拭したいそうですね。

 

山田:
「子ども食堂」というと、どうしても「経済的に困っていて食事ができない子が行く場所」という印象が強いので、「そんなところに行かせるなんて…」という気持ちになる親御さんも多いと思います。ところがここは宿題しても、遊んでも、何をしてもいい自由な空間。毎日行きたいくらい楽しい場所というイメージに変えていかないと、子ども食堂が持つネガティブな問題は解決できないのではないかと思います。

 

「地球の子供食堂と宿題cafe」のこれからの展望やビジョンを教えてください。

 

山田:
私が前々から思い描いていた「教育に携わりたい」という願い、その第一歩がやっと踏み出せたところです。教科を教えるだけでなく、人として大事な道徳や倫理、人と関わる楽しさや人のためになることを一緒に考え、伝えていきたいと思っています。今は宿題サポートしかできていないので、これからワークショップを増やしたり、理科の実験も個々でやったり、学校で学ぶ勉強以外のことも学べる場所にしていきたいと思っています。将来働くときに役に立つようなスキルが学べるのも良いなと考えています。

これからも様々な形で地域に貢献したい

リリマリとして取り組んできた活動にはどんなものがありますか?

 

山田:
2010年から地域活性化の活動を行っています。初めは勝手に行って勝手に盛り上げるの精神で、地域を盛り上げるためのイベントなどを企画していました。その後、地域活動だけでなく清掃活動や復興支援などの社会貢献活動なども始め、SDGsにつながる活動も行っています。

 

今後はどんなことに取り組んでいきたいですか?

 

山田:
子ども食堂の形を広げていきたいのはもちろんですが、例えば、協賛企業さまの職業体験や、子どもたちに新潟を好きになってもらうきっかけづくりをここでしてもらうことで、新潟で就職したいという子どもたちも増えるかもしれない。UターンやIターンにもつながればいいなと考えています。あとは、もともとのコンセプトである「誰かのために」を多くの人に知ってもらいたいです。地域のために何かしたいけど、1人じゃどうしようもないこともあります。リリマリはアイデアを出し合ってみんなで一緒に動けるのが強み。みんなの力でどんどん面白いことを作っていこうと思っています。

 

明和義人祭に期待すること、メッセージをお願いします。

 

山田:
以前、明和義人祭の本をいただいたのですが、小学生が「学校にも置いてある」「自分も読んだ」と言っていて、地域の子供たちにはすごく浸透していると感じました。しばらくイベントごとが制限されていますが、お祭りはやっぱり地域が盛り上がるもの。再開する時には、ぜひ子ども食堂も連携して何かできたらうれしいですね。

明和義人祭実行委員より文庫本「新潟樽きぬた」を寄贈させて頂きました。

「明和義人伝~モダンタイムズ~」とは

明和義人に準え、現代で『勇気をもって行動し、自らの手で未来を切り開こうとしている人』にスポットをあて、今までになかったものを始めようと思った原動力や、きっかけ、そして具体的な活動内容を紹介します。新しいことを始めようとしている方の一助となれれば幸いです。