普段は新潟市役所の職員として、どんな仕事をされているのですか。
稲葉:
都市政策部で、主に新潟駅から古町までの「にいがた2km」のまちづくりを担当しています。経済・産業育成そのものというより、人に関わるソフトなまちづくりが中心です。古町では「リノベーションスクール※1」を運営し、空き物件だけでなく、歴史や文化、食、人などの資源を使い、エリアを再生する「リノベーションまちづくり」に取り組んでいます。
もう一つ、「にいがたまちあそび学校 KAIKOU!※2」も担当しています。魅力的な民間の方を行政側にも知ってもらうきっかけをつくりたい、というのが出発点です。
プライベートでの活動も積極的です。代表を務めている「8BANリノベーション」を立ち上げたきっかけについても教えてください。
稲葉:
市役所のまちづくり担当として仕事をしてきた中で、本当にこれでまちが良くなっているのか、よく分からないという疑問がずっとあったんです。それで、まちづくりに関してもっと勉強しようと思い、2019年に「都市経営プロフェッショナルスクール」という民間運営のまちづくりスクールに自費で参加しました。
そこでまちづくりの専門家でもある講師の木下斉先生から、ガツンと言われたんです。「公務員は顔がない。自分の名前で仕事をしていないから、責任も持たないし、本気でやる奴はいない」と。さらに「商売も、根っから商売人じゃないから、お金を稼ぐとか、人がどういうものを本当に求めているかなんて、本当の意味では絶対に理解できない」「お前がまず商売をやってみろ。小さくていいから」と言われました。これが刺さりました。
当時、市役所の副業規定に基づいて、私自身がお金をもらわない形で、建築家の友人と「8BANリノベーション」という任意のまちづくり団体を立ち上げました。最初はビル再生プロジェクトをやろうとしたのですが、様々な事情が重なりで実現しませんでした。それでもすぐに動けることをやろうということで、タキザワガレージ東堀の屋上で「8BAN PARK」というマルシェをスタートしました。それ以後、立体駐車場の屋上や商店街の道路などを舞台に、飲食店の出店やワークショップ、物販などを行っています。お金がない中で、どうやれば継続できる形になるかを、ずっと実験のように続けてきました。
「8BANリノベーション」を起点に、さまざまな活動に広がっているのですね。
稲葉:
最近では、新潟市中央区にあるこんぴら通り商店街で、新たにマルシェを始めました。廃業した銭湯・寿湯の再生に昨年から8BANで取り組み、再生は実現しなかったものの商店街の方々と仲良くなったことがきっかけです。商店街の皆さんはとても前向きなのですが、動ける若手がいないという悩みがあると聞きました。
私たちはもともと、8BANの活動の中でも道路上でマルシェをやって、商店街の人や来場者と顔見知りになり、空き物件情報を教えてもらって出店者をエリアに呼び込むようなことをやりたいと考えていたんです。両者の考えが重なり、本格的に協力させていただくことになりました。「賑わいづくり」というよりは、「商店街と出店者と来場者が、顔見知りになる場をつくる」というイメージですね。
もう一つ、「√NIIGATA(ルートニイガタ)」という活動もされています。
稲葉:
同年代の5人で立ち上げた、新潟限定の歴史探求ユニットです。月に1回集まって、それぞれが興味のあるテーマを調べ、ゼミ形式で発表し合い、テーマが深まったら公開講座を開いたり、講師をお呼びしたりもしています。
人とまちは似ていると思っていて、誰かと知り合ったときにその人のルーツや失敗、幼少期のことを聞くと、どんどん好きになっていくことってありませんか?まちもそういったものではないかと思っているんです。
歴史を知る人を増やすことで、それぞれが自分の言葉でまちを語れるようになっていく。お店をやっている人なら、歴史にちなんだコンテンツが生まれて、新潟がどんどんオリジナルなまちになっていくのではないかという仮説のもと活動しています。